コラム

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 COLUMN 1. 去勢・避妊について

 ii. 倫理観と社会観

去勢・避妊の議論になると、必ずと言っていいほど登場するのが、「倫理的な視点」と「社会的な視点」のように思います。

倫理的な視点というのは次の言葉に代表されるような意見のことです。

  • 犬も人間と同じように尊い命を持つ動物であるから、人間にしないことは犬にもするべきではない
  • 生まれたまま、自然のままが一番。健康体にメスを入れるなんて不自然。

一方、社会的な視点というのは次のような感じです。

  • 保健所送りになった犬や、繋ぎっ放しの飼い方、放し飼いによる事故死など、飼い主の理不尽さの犠牲になった不幸なペットが増えていることを他人事と思わず、個々人が社会的責任を果たすべきである。
  • 流行にのった乱交配や、安易な一般家庭での繁殖が引き起こす、遺伝的疾患を持った犬の増加などを問題視すべきである。

つまり、倫理的な視点に立つ方というのは、愛犬⇔飼い主の1対1の関係を中心に物事を考えているのだと思います。去勢なんて心情的にどうしても…という方はこちらのタイプなのでしょう。逆に、社会的な視点に立つ方というのは、社会全体から見て自分たちのすべきことは何か、自分の愛犬のみならず、すべてのペットが幸せになるためには何をしたらいいかという視点で物事を考えているのだと思います。

もちろん、このどちらでもないという方も多いはずです。私もラナを飼うまで、そして飼ってからしばらくは、恥ずかしながら、なぁ〜んにも考えていない、ただのお気楽な犬好きオーナーでした。でも、本当はそれではいけなかったはずです。犬を飼うことをあまりに安易に考えていた自分達のことを、今は反省しています。

あくまで私個人の経験上ではありますが、去勢否定派の方に意見を聞くと、多くは上に示した「倫理的な視点」で話しをされます。また、去勢肯定派の方に意見を聞くと、多くは「社会的な視点」で話しをされるようです。(← だから話しが平行線を辿るということも言えますね)

私の場合、この二つの視点のうち、自分がどちらの視点を重視するのかさえハッキリしていれば、おそらく去勢するかしないかでここまで悩むことはなかったのでしょう(^^;。しかし、そう簡単に割り切れることではありませんでした。だってどちらも間違ったことを言っているわけではないのですから。

ただし、私が二つの視点共に捨てがたく思って迷いに迷ったのは『去勢・避妊』に関してであって、『交配』については最初から迷いはありません。ハッキリと『社会的な視点を重要視すべきだ』と言えます。その点に関してはまた次章で…

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