コラム

コラム

 COLUMN 1. 去勢・避妊について

 iii. 交配に対する考え方

我が家でラナの去勢を行うかどうかという話が出たときに、まず最初に持ち上がったのは、「将来的に交配させるかどうか」ということでした。ラナに子供が生まれたらどんなに可愛いか…その子を育てられたらどんなに嬉しいか…それは誰しも一度は思うことだと思います。しかし、そう思うからと言ってすべてのコーギーを飼っている一般家庭が交配などさせようものなら、それはもう大変なことになってしまいます。そうしたことも踏まえて、夫婦それぞれに様々な本やインターネットなどにより情報を収集し、持ち寄って話し合った結果、幸いにも二人の意見は以下のように一致しました。

交配は、環境も知識も十分とは言えない一般オーナーが、<愛犬の子供の顔を見たい><愛犬にお産を経験させたい><子供の情操教育の一環として犬のお産を見せたい>といったオーナーの自己都合により行うべきものではない。

私達はコーギーという犬種に惚れ込み、そして出会った一頭の犬に惚れ込み、家族の一員として迎えることになりました。その時には正直言って深く考えていなかったのですが、実は、ラナというコーギーを迎えた瞬間に「オーナーとしての社会的責任」も手にしていたのです。

オーナーは、自分の愛犬にさえ責任を持てばそれでいいのでしょうか? もちろんそれは最低限のことではあるでしょうが、交配まで考える以上、愛犬の子供達、さらにその子供達、さらにその子供達と、考えただけでも莫大な数になるワンコたちのただの一頭たりとも不遇な生涯を送ることにならないよう、ケアしていく責任があると思うのですが、いかがでしょうか。また、純血種の交配にあたっては、「スタンダードを守る」という大前提があり、自分の愛犬が、この大前提に見合う個体かどうか(オーナーの目で自分の愛犬を判断してどんなに完璧だと思ったとしても、それとこれとは別の話です)の検査や、血統を遡った疾患の有無の調査、あるいは交配相手の詳しい情報分析も必要でしょう。少なくとも、ただ単に同じ犬種同士を掛け合わせればいいというのではないことだけは確かです。

このような情報も環境も知識も時間も圧倒的に不足している我が家に、交配する資格などあるわけが無いのです。

おそらく、現在コーギーの交配をされている方というのは、それ相応の知識・環境・そして犬種全体を良くして行こうという情熱の備わった、しかも、生まれてくるすべての命に責任を持つ覚悟が出来ていらっしゃる立派な方なのだろうと思います。我が家では、到底そんなことは出来ません。だからこそ別の形で、オーナーとしての社会的責任を果たして行こうと思っています。

余談ですが、もし、「そこまで考えて無いけど交配するつもりだよ」という方がいらっしゃるのなら、今からでも遅くありません。少しだけ立ち止まって考えてみてください。

 『自分達は何のために交配させようとしているのか』
 『生まれてきた子供たちは、どうするつもりなのか』
 『万が一、生まれてきた子供達すべてに疾患があった場合に、
  すべてを手元に置いて一生面倒を見る覚悟があるかどうか』

 上記の問いに対して一つでも即答出来ない項目があるのならば、交配は踏み止まった方が良さそうです。もし、「一番可愛い子だけ手元に残せればそれでいいの♪交配にかかったお金を取り戻さなきゃならないから、もちろんあとの子供達は売るわよ。コーギーの子供は高く売れるから楽しみだわ。もし疾患があったとしても黙っていれば分からないし、最悪タダで差し上げますってことにすれば誰か貰ってくれるでしょ。」と言われる方がいらっしゃったら、要注意です。その方は自覚症状が無いだけの立派な悪徳業者予備軍と言えるのではないでしょうか。


[前へ][戻る][次へ]